我がオーディオたちにShort Goodbye

オーディオ

本日2018年8月5日(日)をもって、我が家の主だったオーディオ機器はもれなく旅立つことが決まった。
タイへ旅立つ軍資金を得るためにオークションサイト等で出品していたのだが、本日ついに落札が決まったのである。
具体的には、「DALI MENUET」「SONY SS-86E」「BURTON Soloist Mk2」「AL38432DS」「PM5005」「FX-Audio 202J」。
安物ではあるが、いずれも思い出深い機器たちだ。
学生時代からこつこつと集めてきた物も多いこれらオーディオ機器たちには、一つ一つ大切な思い出が詰まっている。
今までどんなに金欠になろうとも、オーディオ機器だけは売らずに堪えてきた。
来月から長く家を空けるのもあって、腐らせていてもしかたないという理由からやむなく手放したのだが、落札が決まったにもかかわらず、未だに未練がましく大音量でスピーカーを鳴らしている次第だ。
今回はこれら思い出の機器たちのラストリスニングを堪能しつつ、極めて個人的な思い出なんかを書き連なっていこうと思う。

BURTON Soloist MK2

初めて買ったまともなヘッドホンアンプだったが、大満足の一品だった。
一般的にはDAC機能も付いたものを買うのだろうが、これはヘッドホンアンプ機能だけの製品。
DACとアンプをそれぞれ単品で買って繋げるという、拘りのチョイスをしてみたのだ。
性能は素晴らしく、手持ちのヘッドホン「AKG 712pro」の性能を遺憾なく引き出してくれた。
迫力のある音圧と綺麗な高音、高い分解度と、まさにわたしにとって最高のアンプだった。
購入当時、今よりも断然ロックが好きだったわたしは、これにヘッドホンを繋いで大音量で聴いていた。
実は最近耳が遠いと感じることが多々あるのだが、8割がたはこいつのせいだと確信しているくらいだ。(もちろん爆音で聴いていたわたしが悪いのは言うまでもない)

こいつがなによりも優秀だったのは、YouTubeなどの低品質な音源を再生するときだった。
ネットでは低ビットレートでアップロードされたライブ音源が多く出回っており、貴重ではあるが音楽的には少し物足りない。
しかしこれを通して再生すれば、貧弱な音源も迫力ある音へと変貌した。
明らかにマスター音量の小さい音源なんかも、しっかりとした音量が取れたので重宝したのだった。

SONY-SS86E & FX-D202J

スピーカーで音楽を聴くことの楽しさを教えてくれたこの2つ。
この格安セットのおかげでわたしの音楽ライフは2回り以上楽しくなった。

特にデジタルアンプは定価5000円程度にもかかわらず、素晴らしい性能だった。
デジタルアンプなので消費電力も少なく、かつ高音質で鳴らしてくれる最高のアンプだった。

スピーカーも一部ネットで絶賛されていたこちらを購入してみたのだが、結果正解だった。
そこそこの大きさとシンプルな見た目は安価ながらも所有欲を満たしてくれ、スピーカー、それもちゃちなコンポに付属しているものでなくちゃんとしたものが部屋にある喜びというものを知った。
音は今使っている「DALI MENUET」と比べてしまうと物足りないが、家にある5000円のUSBスピーカーなんかとは比べるまでもなく良い。
価格的にはかわらないのだが、やはりこれはパッシブスピーカーの性能の勝利ということだろう。

ちなみに両方5000円程度で買ったのだが、オークションでは倍近くの値段で売れた。
特にFX202Jは1万円以上の値が付いたのには驚いた。
年々評価が上がっているのだろう。

AL-38432DS

USB-DAC界でコスパ最強と噂される「AL-38432DS」
当時2万円台でDSD256まで対応している評価の高いDACなんてこれくらいしかなかった。
もちろんDSD音源のすごさを体験するのが目的で買ったのだが、これがもう最高だった。

購入後、とりあえず2つのアルバムのDSD音源を聴いてみた。

各楽器、歌声の生生しさが半端じゃない。
リアリティがあり、迫力もある。
たいしたシステムじゃないのに、まるでそこで演奏しているかのような雰囲気があったのだ。
ここ数年ジャズはスピーカー派だったわたしだが、ここまできめ細かいとヘッドホンで聞いても楽しめる。

このおかげで音源の大切さがわかり、CDリッピングの際は無圧縮にこだわるようになった。
そして音楽におけるリアリティを求める楽しさを知るようになり、敬遠していたヴォーカル物のジャズを聴くようになり、今ではかなり好きなジャンルにまでなった。
さらにこれがあるおかげでパソコンから各アンプに繋げられたので、単体USB-DACはそういう面でも便利なものだった。
オーディオ初心者のわたしにとってはまさに先生のような機器だった。

Marantz PM5005

デジタルアンプに繋いでスピーカーを聴いていると、やはりどうしてもアナログアンプの音が聴きたくなってきた。
といってもまともな品を買おうとすると10万円単位で吹っ飛んでいくので、とりあえずエントリーモデルのこれを2万円で買ってみた。
評価は二分されていて不安だったが、結果としては満足できた。
アナログアンプ特有の柔らかさというか自然な音は、特に生楽器を使ったジャズ、ボーカル物の曲に適していた。

ただし、オーディオ店で上位モデルを繋げると差が歴然としていた。
例えば同じメーカーの「PM8006」はより解像度も高く定位もばっちし決まっている。
まさに「ピュアオーディオ」の言葉通り、自然なリアルさがあった。
もちろん価格を考えれば当然なのだが、これがきっかけでさらにオーディオ熱が高まることになった。

DALI MENUET

スピーカーの素晴らしさに目覚めたわたしは、オーディオ店で色々なスピーカーを試聴していた。
そんな中、一番しっくり来たのが「DALI MENUET」だった。

実売価10万円程もするこれは素晴らしい美音を奏でており、他のスピーカーを圧倒していた。
予算5万円前後で探していたのだが、これを聴いた後ではもはや買う気にならない程だったし、同価格帯の他スピーカーを聴いてもやはりこれが一番だった。

特徴は圧倒的な美音と音場の広さ。
ジャズや、女性ボーカルものの曲を極めて美しく響かせてくれるのだ。
部屋全体に鳴っているような音場の広さもあるし、定位もしっかりしていたので聴きごたえがあった。
ただし当時はスピーカーに10万円は出せなかったので、中古を探すことに。
幸いスピーカーを含めほとんどのオーディオ機器は中古でも性能差を感じることは少ないので、中古でも買いやすかった。
ただこれは人気モデルらしく中古でも相場が高く、結局美品を7万円で購入した。
届いてみると傷一つなかったので安心したものだった。

早速アンプに繋げて音を出してみると、最高の一言だった。
まずは圧倒的な解像度。
「AKG 712pro」というそこそこなヘッドホンを使っていたのだが、それと同様かそれ以上の解像度をスピーカーで味わえることに感動した。
そして音の艶やかさ。
Chet Bakerの古臭い音源のトランペットの音でさえ、今までで一番艶めかしくリアルに聴こえたのだ。
また、「SONY SS86E」を使っていた時に不満だった重低音の薄さだが、原因は主にアンプだと思っていたのだが、MENUETにしたらその不満も見事に解消された。
低音が弱いとされるマランツ製のアンプでさえ、十分な量の重低音が響き渡った。
「音は8割以上スピーカーの性能で決まる」とよく言われるが、まさにそれを実体験したのだった。
重低音がよくなったおかげで映画を見ても迫力が増し、アマゾンプライムビデオが捗るという副次的な恩恵もあった。

見た目も美しく、小さいので場所も取らない。
なのにこんなに素晴らしい音を奏でてくれるこのスピーカーは掛け値なしに最高だった。
今、記事を書きながら聴いているのだが、その素晴らしさに改めて感動している。
そしてこれが今日で最後だと思うと、目頭が熱くなる。

オーディオ機器とわたしの青春

昔から音楽が好きだったのもあって、自然とオーディオ機器にも興味があった。
とはいっても、最初はカセットテープだったり、MDプレイヤーに安いイヤホンを繋いでいただけだったのだが、当時はそれで十分だった。
もちろん年齢を重ねるごとにより良い環境を求めていって、今ようやく念願のMENUETを所有できたといった具合だ。

学生の頃はただでさえ金欠だったし、交際費もあれば他に欲しい物も山積みだった。
そんな中、音楽を聴くためだけのオーディオ機器にかけられる余裕なんて全くなかった。
それでも徐々に環境を良くしていき、今の環境が出来上がっていったというわけだ。

加えてここ数年は金欠の極みのような状態が続いてたから、使わない物は躊躇なく売ったし、使う物でも贅沢品はどんどん売っていった。
そんな中、オーディオ機器だけは最後の砦として残していた。
なぜならこれらはわたしの青春の結晶であって、思い出だったのだ。
こんなものは贅沢品の極みのような物だし、本来は真っ先に手放すべきだ。
でもこれらを手放すということは、自分の中のなにか大切な、もう決して戻らない、掛け替えのない物を手放すがごとく感じていて、今まで売ることはできなかった。
そういうわけで、今回断腸の思いで処分するに至ったわけだが、未だに割り切れないところがある。
なので正直気持ちの整理のためにこんな記事を書き始めたのだが、書きながら、聴きながら、色々な思い出が蘇ってきてしまい、むしろ逆効果だったかもしれないと感じている。

思えばこの狭い5畳程度の部屋の中で20年余りを過ごしてきた。
両親が音楽好きだったこともあり、音楽プレイヤーは早い段階で一通り揃えてもらった。
古いフォークソングを流しながら、母にアコギを教えてもらった小学校時代。
ミスチルやスピッツにハマって、自分で好きなアーティストを見つける喜びを知った中学時代。
ギターをきっかけに国内外問わず色んなロックを聴いた高校時代。
父が酔って暴れても、部屋で音楽をかければ恐怖は薄らいだ。
受験が失敗し、ひたすらBillEvansを流して惨めさを噛みしめていた。
そして大学卒業後、就職もしないで誰にも連絡せず一人でずっと部屋にいたあの時、どれだけ音楽に救われただろう。

そんなオーディオ機器は、もうなくなる。
でもこれで終わりじゃない。
思い切り稼いで、次はもっとすごい機材を揃えよう。
高性能なネットワークプレイヤーに、B&W製の最高級スピーカーを買おう。
広い部屋に、贅沢にスペースを取ってセッティングしよう。
それに相応しい人間となって戻ってこよう。
その時まで、少しだけさようなら。
また会う日まで。

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