ヘッドホンにさよならしたら肩こりが治った話 part2

オーディオ

前回の続き。

ヘッドホンを試聴しにヨドバシカメラに行ったのだが、ヘッドホン置き場へ向かう途中にあった高級オーディオコーナーで足が止まった。
そこは家電量販店らしからぬ静けさで、数十万もするスピーカーやアンプがずらりと並んである。
独特な入りづらい雰囲気があるので普段は寄りもしないのだが、その日はそこで流れていたジャズが気になって足を止めた。

1組のスピーカーから、女性ボーカルのジャズが流れていた。
そのスピーカーは「DALI EPICON2」というもので、小さいながらも1組で40万円もするすごいものだった。


↑高級オーディオメーカー「DALI」の最高級ブックシェルフ型スピーカー「EPICON2」

高級なスピーカーの音って聴いたことなかったし、どんなもんか聴いてみるかと軽い気持ちで試聴を始めたのだが、スピーカーの真ん中に立ってじっくり聴いてみると、とんでもない音が流れてきた。

目の前でバンドが演奏しているのだ。
スピーカー同士の真ん中にボーカルが立っていて、その後ろにドラムが、左斜め後ろにベースがいる。
あまりにも存在感がリアルで戦慄してしまった。
オーバーに書いているわけじゃなく、まさしくそこにいるようなリアリティがあったのだ。
目の前にいるボーカリストの口の位置まではっきりとわかってしまう。
人物や楽器の姿が浮かび上がってくるのだ。

後に学ぶのだが、これを「定位」というらしい。
優秀なスピーカーはこのように定位がしっかりしているため、演奏者の位置がわかるくらいくっきりした空間を表現できるとのこと。

それだけでなく、音そのものがとても生々しい。
声や楽器の音がリアルすぎて、本当にそこに存在しているかのようだった。
なんなら歌声の吐息が顔にかかってきそうな勢いだ。
たった2つのスピーカーから音が出ているだけなのに、そこ一帯はもはやライブ会場だった。
どうなってるのこれ?と呆気にとられていたのだが、まさしくこれがピュアオーディオの世界なのだった。

じっくりと聴いていると店員さんがやってきて、「どう、良いでしょ?」と話しかけてきた。
もうとにかくこの感動を伝えようと、「ここにボーカルがいて、あっちにベースが~!」なんて指をさしながら我を忘れて一生懸命伝えていた。
店員さんはにっこりしながらうんうんと頷き、それはスピーカーの定位が良いから場所まではっきりわかるのだと教えてくれた。

高いスピーカーはこんなにすごいんですね~なんて話していたら、もう少しグレードを下げてもしっかり鳴るスピーカーもあるよと、別のを鳴らしてみてくれた。
それは「DALI MENUET」という名前で、かなり小さなものだった。

聴いてみると、その大きさから出ているとは考えられない美音が流れてきて、さっき程ではないにしろ十分感動できるものだった。
それ以外にもいくつか聴かせてもらったのだが、最初のを除くとこれが一番いい音に聴こえた。
このスピーカーの価格は約10万円。アンプも同程度のクラスのものが良いと言うので、合わせると20万円。
スピーカーだけで40万円のものと比べればだいぶ安いが、それでも20万円なんて予算はどこにもない。

他にも5万前後のスピーカーも聴かせてもらったが、先に良いものを聞いてしまったせいかあまり興味を惹かれなかった。
やはりこの10万円するスピーカーが欲しい、そう感じてしまった。
決して10万円が法外な値段だ、と感じたわけではなく、むしろ10万でこれだけ快適なオーディオ生活が送れるならいいんじゃないか?と思わせるくらいのものだった。
たった10万円で、我が家がブルーノートやビルボードのライブ会場に変化するのだったら…。
加えてそこにビル・エヴァンスやコルトレーン、チェット・ベイカーが生き返り、目の前で演奏してくれるのだ…!
むしろこれは安い買い物なのかもしれない。
なんて考えつつも、結局は買えないのですごすご退散し、当初の目的であったヘッドホンを見に行った。

 

ヘッドホンはというと、そこは大型店なので試聴コーナーがあり、座ってじっくり聴けるようになっている。
しかし多くの人が乱雑に試聴したのだろう。ほとんどのヘッドホンはボロボロで見栄えが良くなかった。
加えてヘッドホンアンプは1万円程度で買えるエントリークラスのものが使われていたのも印象が悪かった。
というわけで色々なヘッドホンを試聴したが、どれも感動はなかった。
というより先ほどのスピーカーで味わったリアルな臨場感が新鮮すぎて、耳元で鳴るヘッドホン自体に興味が湧かなくなってしまっていたのだった…。

お金をかけずにオーディオを楽しむプアオーディオの世界

それ以来、スピーカーをアンプにつないで聴きたいという欲求がふつふつと湧いてきた。
だがとてもじゃないが買えないので途方に暮れていたのだが、音が空間に広がるスピーカーの良さを知ってしまったためにどうしても諦めきれない。

というわけで色々調べていると、ピュアオーディオならぬプアオーディオ(Poor Audio )なるものがあるらしい。
どうやら中古スピーカーと中国製の激安デジタルアンプ(いわゆる中華アンプ)を組み合わせて、安くてもそこそこな音質でオーディオを楽しむというものらしい。
「これまさにわたし向けのやつじゃん!」と思い、手を出してみることにした。

さっそく中古で1万円程度のスピーカーと、ネットで評判の良い中華アンプを5000円程度で購入し、手持ちのUSB-DACにつなげて聴いてみた。
すると、十分すぎるいい音が部屋に広がるではないか!
音量も、アンプを9時の位置まで回せば十分な量が出てくれた。

部屋でスピーカーを流すのは、だいぶ前に壊れたHDD付きのミニコンポ以来なのだが、これらはそれをはるかに上回る高音質だった。
もちろんヘッドホンと聴き比べると、低音が弱かったり全体の解像度が悪かったりはあるのだが、聞き比べない限り不満は全くない。
いやこれほんとすごいわ…、たった15000円でうちのオーディオ環境が完成しちゃったよ…。

それから500日後…

部屋ではほとんどスピーカーで聴くようになった。
たまに大音量でロックを聴きたくなった時だけ、ヘッドホンを使っている。
それまではひたすらヘッドホンを付けていたのだが、スピーカーをメインにしてみると、ヘッドホンがいかに鬱陶しい物だったかがわかった。
今思えば、夏のくそ暑い中、もこもこのヘッドホンを1日中付けていた自分が恐ろしい…。

そして、ヘッドホンを付けなくなってから体が軽くなった。
そう、肩こりが治ったのだ。
ヘッドホンなんてたいした重さじゃないけれど、ずっと付けているとさすがに首周りへの疲労が溜まっていたらしい。
(タイトルにあるこれを書くためにずいぶん長くかかってしまった)

 

散々ヘッドホンやらヘッドホンアンプにお金をかけておきながら、結局は計15000円の中華アンプと中古スピーカーで満足してしまったわたし。
所詮その程度の耳と情熱だったのだろうか、いや違う。
それだけこの組み合わせのコスパが高いということだ!
というわけで、興味がある人には超おすすめ。なんせ安いしね。

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